サイトへ戻る

ワインから布地を?

グリーンテキスタイルの技術と発明

2019年11月18日

先週のブログでは、一枚の布地や服の誕生は、少なくとも12から15のプロセスを経ることを指摘しました。しかも、一部のプロセスは環境にやさしくない廃棄物を生成する可能性があります。それに対し、MACHIENは「靴を変えず靴紐を変えよう」というイベントを企画し、人が流行を追うときに派生する資源のムダを減らすことを目指します。これにとどまらず、最近ではテキスタイル産業界が、同産業に対して世間が持っている悪いイメージを払拭するために、様々な革新的な技術の開発に取り組んでいます。本日のブログでは、斬新なグリーンテキスタイル技術や素材を紹介します。

グリーンテキスタイル技術

織物の製造プロセスは定式化されていますが、一つひとつのステップに対しては技術革新が可能です。以下は最近になって開発された新しい紡織技術です。

一、酵素糊抜き法(Enzymatic Desizing)

先週のブログで「汚水の50%が糊抜きから生じる」ことを指摘しました(陳宜謙,2019)。昔のテキスタイル産業界では強酸や化学的酸化法で、糊抜きしていたからですが、今では天然酵素を用いて糊抜きするという新たな技術が発明されており、この新技術のおかげで、有機体を通して糊を自然に分解させることが可能になりました(Athalye, 2013)。

二、ベルベリン染色(Berberine Dyeing)

胃の調子が悪いときや下痢の症状があるときの治療薬が、布地の染色に役立つとは思ってもいませんでした。アルカロイドの一種であるベルベリンを布地に塗ると、後続の染色工程で天然染料の吸収率が高まることが発見されたからです(Haji、2012)。これにより、染色前に布地に使われていた化学コーティングを使う必要がなくなりました。

グリーンテキスタイル素材

近年のテキスタイル業界では、大人気のペットボトル再生繊維だけでなく、以下のような繊維や素材が開発されています。

一、ロータス繊維(Lotus Fiber

カンボジアのテキスタイル会社Samatoa Lotus Textilesは、地元の女性が家族を養う能力を得られるように、ロータスから繊維を抽出する技術を開発しました。この技術により、ロータス繊維で織物を作れるようになったのです。しかも、すべての加工プロセスが機械ではなく、手作業で行われるので、植物繊維の抽出、紡績、または織りの過程で、石油、電気、ガス、またはその他の有害物質を使わなくてすみます(Samatoa, n.d.)。

二、発酵ワインからの繊維(Fiber of Fermented Wine

オーストラリアの農業科学者であるGary Cassは、親友のワイナリーでワインを醸造する時、ビールや赤ワインなどのアルコールにアセトバクター(Acetobacter)と呼ばれる細菌を加えると、アルコール発酵した後で、セルロース(cellulose)のような物質の産出を促すことを偶然に発見し、さらにこの物質を精製、紡績したら、布地を作る繊維になることがわかりました(Suparna & Rinsey Anony, 2016)。この布地の着想の原点についてCassは、一着のジーンズを生産するのに8,000リットルの水道水が必要であり、しかも多くの天然素材は栽培の過程であまりナチュラルではないことが分かったので、偶然の発見をさらに深く掘り下げ、劣ったワインで布地を生産することを決めた、と述べています(“From wine to twine”, n.d.)。

三、ココナッツ繊維(Cocona Fiber)

アメリカのCocona社は、ココナッツの殻から抽出した炭素繊維でスポーツウェアを織り出しています。素材は炭素繊維なので、クールダウン、脱臭、および紫外線防止の効果が通常の布地よりも優れており、しかも軽量です(Suparna & Rinsey Anony, 2016)。

上記のような革新的なテキスタイルの技術や素材について知ると、伝統的なテキスタイル産業も意外に創造的だと感じたのではないでしょうか。 この歴史の長い産業は、これからも「ワインから布地を」のような革新的な技術を開発していくことでしょう。

参考資料: